忘れることと集めること-普通と標準
はじめに
「普通だと思ってました」「いや、それ普通じゃないよ」
こんな会話が時々ある。どちらの立場にも立ったことがあるけれど、「そうか、これが普通か」という合意に至ったことはないように思う。
大体は、「そうかなぁ」「そうだよ」的に、お互いの意見は交わることがない。
コミュニケーションが成立していない。
私たちは普通に暮らしているのに、普通が問題になった途端にそこには断絶がある。
これはどうしてなのか。
今回は、普通はどのように普通なのかについて書く。
ひとりになんてなれない-偲ぶという営み、過去のこだま
私たちは死者を偲ぶことを知っている。
偲ぶことは、生前のあり方に思いをめぐらせ、死者を改めて弔うことだ。
偲ぶとき、私たちは死者を「見て」いる。
確かに、私たちの心には死者の像が結んでいる。
では、その像はどのようにしてもたらされるのか。
また、
さよならを言うことは、少しだけ死ぬことだ
ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
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私たちは離れた場所にいる他者のことを思い起こすことが出来る。
この働きと偲ぶことはどれだけの距離があるだろう。
スピリチュアルな問いのようだが、考えていくのは死者のあり方だ。
死者は死んで「いる」*1。ここには存在が認められる。
では、死者はどのようにして「いる」のか。
*1:英語にしても"He is dead"なのであり、そこにはbe動詞がある
ダイバーシティの多様性-3つの類型と「公私混同」
はじめに
ダイバーシティの重要性がひろく認められる時代になった。
行政もこんな取り組みをしたりしている。
また、社会的マイノリティの包摂も進められており、いわゆる「LGBT」は社会において現在進行形でそのプレゼンスを増している。
一方で、アファーマティブ・アクションのような問題も提起されている。
積極的に差別を是正する措置
これまで不公平な待遇を受けてきた黒人などの少数派の人々に対して、教育や雇用などの機会を優先的に与えること。積極的差別解消政策ともいう。
アファーマティブ・アクションとは - 時事用語 Weblio辞書
(中略)
その反面、(中略)逆差別との見方もされている。
また、女性の社会進出にあたってクオータ制*1を導入する是非についても、わが国ではいまだ結論が出ないでいる。
ここまで書いてみて、それぞれ微妙に話が噛み合っていない。
それは単に私の認識が甘いからというのもあるだろうが、概念の交通整理があまり行われてこなかったせいでもあるのではないか。
今回は、ダイバーシティをめぐる多様性について考えたい。
ひとえに「ダイバーシティ」と言っても、そこには多様な意味がある。
*1:女性に対して一定割合の役職を割り当てること。いくつかの国では法制度として整備されている。
失敗する自分探し-述語集め、環境、システムの内部
はじめに
30歳という数字が薄ぼんやりと見えてくるようになったものの、一方で就労期間より休職期間が長くなりそうな予感がある。
そこそこに不安定な気分の中でふと考えてしまうのは、「私はどのような人間なのか」ということだ。
といって、素直に浮かんだ疑問に着手すると痛い目を見る。
痛い目、とは何か。今回はそれについて考えることにする。